『縦マルチのジレンマ』の話

ゲーム用語に「縦マルチ」という言葉があります。ゲーム業界の中でも特に据え置きや携帯型のゲーム専用機で使われる用語です。

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縦マルチとは

縦マルチとは、ゲームタイトルの販売方法の一つ。

複数のハードウェアに対応するソフトウェアを開発することを「マルチプラットフォーム (クロスプラットフォーム)」といいます。

縦マルチの「縦」とは、ハードウェアの世代を表しており、旧世代機、現行機、次世代機などの違いを表しています。PlayStation で言えば PlayStation 2、PlayStation 3、PlayStation 4といった具合。

「縦マルチ」とは、この世代間をまたがった複数の (縦の) プラットフォームで販売されるゲームタイトルのことを指します。

なぜ縦マルチでゲームを発売するのか

この縦マルチ、一般的にはユーザーの幅、売上機会を上げるための戦略として使われているようです。

例えば、「ドラゴンクエスト ヒーローズ」シリーズは、PlayStation 3、PlayStation 4、PlayStation Vitaでの発売となっており、このうちPlayStation 3、PlayStation 4のラインナップが前述の縦マルチでの発売となっています。

こうすることで、最新のゲーム機本体を持っていなくても旧世代機のユーザーにゲームを買ってもらえる、という売り手側のメリットがあります。

ただ、世代の違うハードウェアは性能機能も当然違うので、全く同じゲームが遊べるわけではありません。その多くは、何らかの機能、表現力を削って作られています。

たとえば、一番わかりやすいのはグラフィック、高解像度の表現。描画スピードであるフレームレート。表示キャラクターの数など。

遊べるストーリーは変わらないので、グラフィックを気にせずストーリーを楽しむだけなら旧世代版で、最新のグラフィックをフレーム落ちなく最大限に楽しむなら現行版で、など、買い手の考え方、購入の決め手も様々です。

この縦マルチの売り方は据え置きゲームの発展にどんな影響があるのでしょうか。

縦マルチのメリットとデメリット

この縦マルチ、売り手にとっていい側面もあれば悪い側面もあります。

いい側面はもちろん、売れる機会が増えること。以前インストールベースの話をしましたが、ゲームタイトルの売上の可能性は、そのプラットフォームであるハードウェアの販売台数に大きく左右されます。

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つまり売れてないハード向けのゲームを作っても、売上はたかが知れてる。当然です。

なのでマルチプラットフォームは、そのソフトウェアの販売機会を増やす手段としては最有力の方法といえそうです。

一方で悪い側面もあります。それは、ゲームを購入するユーザーが旧世代機での体験に満足してしまい、新世代機への乗り換えが停滞してしまう、ということです。

そりゃあ高いハードに買い換えなくても最新タイトルが遊べる、ということであれば、わざわざそのゲームだけのためにハードウェアの買い替えは必要ありません。

でもこれって悪循環だと思いませんか?

縦マルチが現状維持の悪循環サイクルを作る

旧世代機用の縦マルチタイトルを買うと、旧世代機用のタイトル資産がひとつ増えます。でも今後、新世代機への買い替えが喚起された時には、この資産が足かせになります。

PlayStation 4 では、過去に購入した PlayStation 3 のゲームを遊ぶことができません。

(PlayStation Now などのサービスを使って PlayStation 3 対応のゲームを遊ぶことはできますが、あくまでネットワークサービスであり、これまでに購入したゲームを活かすこととは別物です)

PlayStation 3 ユーザーは、このまま PlayStation 3 対応の縦マルチタイトルを買い続けていたら、いつまで経っても PlayStation 4 への買い替えの踏ん切りはつきませんし、買えば買うほどそのハードルは上がってしまいます。

本来ならば次世代機への買い替えを進めてほしいのに、ゲームソフトの収益のためには縦マルチが必要。

この縦マルチによって売り手も買い手もジレンマに陥っているように思えます。

PlayStation VR に乗り越えてほしい

この縦マルチのジレンマを乗り越えるにはやっぱり「他にはできない」体験、がカギになるのではないかと思います。

PlayStation VR は PlayStation 4 専用 (いまのところ) の周辺機器として、全く新しいゲーム体験を生み出すハードウェアです。当たり前ですが、PlayStation 3 では VR 対応ゲームは遊べません。

PlayStation VR は、PlayStation 4 への買い替え需要を喚起することができるでしょうか。

他では体験できないこと、今ならできる新しいこと。

VR デバイスの登場によって家庭用ゲームの展開がどんな局面を迎えるのか。

PlayStation VR の未来に期待しています。